真紅との出逢い
夏祭りの前。あまりのストレスに死にそうで。
いや、実際に病院ばかり通ってて。
入院したり注射ばっかり打たれたり。
結局、卵が先なのか鶏が先なのか。
そんな帰り道、普段寄らないホームセンターに寄った。
いつもはもっと近所の店の方に行くから。
そこのペット売り場は魚を売っていた。
金魚に熱帯魚に海老に貝に水草。
いつも行く店では魚は売ってないから、私はずっとじっと見てた。
そのうちに瓶詰めで売られてる魚を見つけた。
一昔前に流行ったインテリア的な瓶詰め小魚ではなくて立派な魚。
名前は『ベタ』というそうで、正直少し間抜けな名だと思った。
だが名前の下に書かれていた説明にはこうあった。
『オスのみ。死ぬまで闘い合いますので、必ず1匹で飼育なさってください。』
確かに攻撃的とさえ言える奇抜な色とりどりの魚達。
興味が湧いたので店員さんに詳しく聞いてみた。
「この魚は闘魚なんです。
メスさえも攻撃するんですよ。
しかも鏡を見せると自分をも攻撃しようとするんです。
ただこの魚は肺魚(※ 正確には迷宮器官と言うらしい)なので。
だからこんな瓶詰めでも空気さえ入るなら生きて行けるんですよ。」
男女関係無く、そして自分も攻撃する魚。
そしてそれを見ている似たような女。
耳にエラの名残りがあった女。
瓶の中の魚達を見ている内、完全な一目惚れをした。
真紅の身体にプルーの煌きも持つ不思議な子。
昔よく着てたお気に入りの服に似たボルドー色。
その日そのまま。
店員さんに相談して、アレコレと一式買って帰った。
さすがに瓶詰めのまま飼うのは不憫だから。
セット売りの水槽とその他いっぱい諸々諸々。高かった。
帰路はあまりの重さに「これは腕痩せできそう」とプラス思考をしつつ。
今、家にそのベタはいない。
一時的に出来た水溜りにさえ生息するような丈夫な魚。
私によく似てると思って連れて帰った魚。
私より先に死んでしまった。
そんな所まで似なくていいのに。
そして今、我が家には小〜中タイプながらも9つの水槽がある。
個性豊かな沢山の魚達が私の目を楽しませてくれる。
でもミニ水槽の3つは空。
いつかまた一目惚れできるようなベタに出会えた時の為に。
でもきっと1番最初に出会った。
気が狂いそうな夏の暑さの中で出会った。
あのベタの事はたぶん一生忘れない。

